動物学者でありながら、自閉症当事者でもありながら研究の第一人者であるテンプル・グランディン先生の本です。
2014年の本でありながら、当事者ならではの視点で自閉症の複雑性に切り込んだ内容になっております
大まかな流れとしては、自閉症を心に原因を求めていた時代から、fMRI技術などにより脳内の原因を複合的に探求する時代になった。これからは狭い症状にとらわれない個別の症状の原因を探す時代。そしてミクロには、思考パターンを知り強みを見つけ、活かせる場所に行こう、といったものになっております。
重要だと感じたポイント
内面と行動のねじれ
表に出てきていることと内面で起きていることが直接示していない可能性がある。
「原因の非同質性」と「行動の非同質性」という概念がある。前者は、ある者たちが同じ行動をしても、脳にある原因が同じとは限らないということ。後者は逆に、同じような脳の異常が見つかっても、同様の行動を取るとは限らない。たとえば扁桃体が大きいからといって、皆が自閉症になるとは限らない。
自閉症の人が感じていることを言葉で引き出すのは極めて困難で、グランディン先生は、言葉を話さない自閉症者ティトの著作から「行動する自分」「考える自分」という概念を持ち出しています。
どういうことかというと、外から見える行動と、内面の感覚は一致してるとは限らない。大量の感覚刺激に心を閉ざして無反応になることもあれば、同じ状況で癇癪を起こす過剰反応になることもあり得る。
「強烈世界症候群」と「変化が早すぎる世界」
”反応不足と反応過剰、ぼんやりしているのと集中しすぎているのは、元をただせば同じことなのかもしれない。” p121
グランディン先生は、ぼんやりしているのと集中しすぎているのは、どちらも感覚刺激の過剰が原因だという仮説は検討されうるべき、と考え二つの研究を掘り出した。
①神経の過度の処理のせいで情報が強烈すぎて、安定行動を強迫的に繰り返して閉じこもる「強烈世界症候群」
②”身のまわりで起きていることについていけなくて、引きこもってしまう” p123「変化が早すぎる世界」
これら考えに則れば、内面では流れの早すぎる感覚情報についていけない、そのせいで、行動は反応不足でのろのろしているように見えるという状況が成り立つことになる。
思考の3パターン
グランディン先生は思考の型を3つに分けているんですね
・言語思考
・視覚思考の2タイプ
ー画像で考える人=物体視覚思考者
ーパターンで考える人=空間視覚思考者:パターンを見つけ出すのが得意、数学者、画家、チェスプレイヤーなどに使い手あり
感想
全体としては、当事者ならではの内面洞察と想像力、先入観にとらわれないコネクティングザドッツで自閉症に起きている問題への仮説の提示、当事者視点で痒いところに手が届いて気持ちよかったです
特に、「強烈世界症候群」と「変化が早すぎる世界」の感覚は、当事者である私は個人的に非常に共感できました。自分の内面で起こっていることを言語化できてすっきりしました。
思考3パターンは個人的にはまだ半信半疑なので、先生の近著「ビジュアル・シンカーの脳」も読んでみようかなあ