言わずと知れたオルコットの名著
一言で言うと清貧の美徳を映し出したお話です(が、著者にはそれなりの葛藤があったみたい。後述)
まず登場人物の謙虚さが良いですね、何か過ちを犯しても反省する、周りの人が必ずそれを助けてくれる
特に母親の立ち回りが完璧でした
貧しくても心豊かに、というのは「言うは易しやるは難し」なことなんですが、ソーシャルサポートによってはそれも不可能ではないと思わせてくれます
姉妹もそれぞれ至らぬところもありつつもそれが個性となり魅力的でした
読んでいるときは著者のオルコットにはキリスト教的なバックボーンがあるのかな、ぐらいに感じだったんですが、調べてみると父親がかなりの変わり者で、超絶主義を背景とした独自の宗教世界観と教育方針を持っており(自ら学校をつくって娘たちはそこに通っていた)、一家は彼にだいぶ振り回されて苦労した背景があるようですね
「アメリカ文学作家作品大辞典」によると、若草物語は
オールコット一家の高潔な理想主義を映し出した作品であるが、その一家が抱えていた多くの家庭的な問題の方は事実どおりには描かれておらず、無難に言い繕われている。
アメリカ文学作家作品事典p178
とある。また、
牧歌的な子供時代を郷愁の念から描いた作品と解されることが多いが、オールコットの創作意図は、そのようなものではなかった。彼女は金儲けのために書いたのである。「少女むけの物語」を出版社から依頼されて、初めは承諾をためらったオールコットだったが、その後、出版社の意向を汲み少女小説を書いたことが、彼女に精神浄化作用を及ぼすことになった。少女小説の執筆を通して、彼女自身の辛い子供時代を作り変えることができたからである。
アメリカ文学作家作品事典p179
このように単にオルコットの生活を映し出したと言うよりは、父に振り回される貧苦の生活を理想的に脚色していたようです
オルコットは明らかに父の影響を受けていますが、そのベクトルが予想外のもので衝撃です
(父親の強烈エピソードには枚挙にいとまがないのでどこかで紹介したいぐらいです)
ともあれ、読後は「お金⇔友人」という対立があれば必ず、友人をとると答えたくなるような心洗われる作品で個人的には好みでした
参考文献
Kirkpatrick,D.L.(1987). Reference guide to American literature. St. James Press. (カークパトリック,D.L. 青山みゆき(訳)(1991). アメリカ文学作家作品事典 東京 本友社)