以前、発達障害が進化論的に必要である理由(1,2)や、発達障害でも幸福になるための方法を書きました。
今回は、発達障害が社会の中でどう生き抜いていくかを書いていきたいと思います。
その一つとして、チームや社会にADHD(注意欠陥多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ人がいることで、先日紹介した「局所最適の罠」から抜け出しやすくなるというということを説明します。
① 異質な視点や発想の多様性
ADHDやASDを持つ人は、脳の情報処理や認知スタイルが異なることが多く、一般的な人とは異なる視点やアイデアを生み出しやすい傾向があります。これは、集団の思考が均質化して陥りやすい「局所最適解」(一見正しいが、より良い解を見落としている状態)を打破する役割を果たします。
- ADHDの場合:
「注意の拡散性」や「衝動性」により、通常は注目されない情報やアイデアに気づいたり、枠にとらわれない発想を生み出すことができます。- 例:「新しいアイデアやプロジェクトを思いつきやすい」
- ASDの場合:
「こだわり」や「独特の情報処理」によって、深く掘り下げたり、他人が見逃すような細部に気づきやすい傾向があります。- 例:「一般的な常識に囚われない独自の視点や論理的な分析を提示する」
② 集団思考の防止
似たような考え方をする人ばかりが集まると、全員が同じ誤りや偏見に陥りやすくなります。しかし、ADHDやASDの特性を持つ人は「社会的同調圧力」を比較的影響を受けにくい傾向があり(悪く働くこともありますが)、周囲の意見に流されずに独自の考えを主張することができます。そのため、集団が持つ盲点や偏った視点を指摘し、軌道修正を促す役割を担います。
- 「周囲が同調しているときでも疑問や異論を投げかけやすい」
- 「周囲が無視しているが重要な課題を指摘できる」
③ ランダム性やノイズとしての役割(ゆらぎの導入)
①よりも不定形にADHDやASDというのは他人と異なるリズムを持っていることがあります。これによって、組織やチームの意思決定プロセスに「ゆらぎ(ノイズ)」が生じます。結果として、狭い局所的な視野から抜け出すためのチャンスを提供することになります。
機械学習や最適化アルゴリズムでも、ゆらぎやランダム性をあえて導入することで、局所最適を避け、より良い解を見つけることがありますが、それと似た役割を果たすのです。
- 「予測不能な発言や行動により、新たな方向性を模索するきっかけが生まれる」
④ 認知のバランスと補完効果(相補的な役割)
チームや社会において、異なる認知特性を持つ人々が存在することは、組織全体の認知能力を幅広くカバーすることにつながります。
ADHDやASDの人が苦手とする部分を他のメンバーが補い、逆に彼らが得意な部分で組織に貢献できるという「相補的関係」が形成されることで、局所最適を避けるだけでなく、全体としてより高度で多様な課題に対応可能となります。
まとめ(なぜ局所最適から逃れられるか)
ADHDやASDを持つ人々がいると:
- 異なる認知特性からくる視点の多様性により、画一的な思考を防げる。
- 周囲に同調しにくく、集団思考の罠を回避しやすい。
- ランダム性やゆらぎを導入し、停滞を打破するきっかけを作る。
- 認知特性が補完し合い、組織の全体最適を実現しやすい。
以上の理由から、ADHDやASDの人材がいることは、社会やチームが陥りやすい「局所最適」の罠を回避し、より良い解を見つけることに貢献するのです。
進化論や幸福追求の時も書いたかもしれませんが、当事者はもちろん組織や社会の側にも知っておいて欲しい限りです。
ですが、これが一つの発達障害の生きる道になると言えるでしょう。
このシリーズはまた続けたいと思います。