先日は「トップダウンとボトムアップとは何か」。そして、〈ボトムアップの罠〉として「群盲象を触る」を紹介しました。
今回は〈トップダウンの罠〉ということで。「チャレンジャー号爆発事故」の事例をみていきましょう。
____________________
1986年1月27日
20時45分頃(米東部標準時)
「ケネディ宇宙センター〈KSC〉」「マーシャル宇宙飛行センター〈MSFC〉」「モートン・サイオコール社〈MTI〉」3組織による、同日二度目のスペースシャトル『チャレンジャー』に打ち上げに関する電話会議が開催された
冒頭、MTI社の技術者から「当日の最低気温が氷点下7℃に達するとの予報だ。これではO-リング(密閉用のゴム)が硬化し、ガス漏れする恐れがある。『No-Launch(打ち上げ延期)』を勧告する!」との声が上がった。
しかし、MSFCのマネージャーのマロイらは「これ以上延期するつもりか?」と打ち上げできないと言いきるためのデータを要求する。
それを受け、MTI社は“経営者だけ”の社内協議が行う。予定を超える30分ほどの協議の末、彼らは技術者の意見を黙殺し『Launch-Go(打ち上げ決行)』の結論を下す。
同23時45分頃
MTI副社長キルミンスターは「打ち上げ決行」の旨を伝える文書をKSCへ送付し、NASAもそれを採択する
1月28日
早朝
打ち上げ台などに付着している氷が懸念されたが、O-リングに関する議論がされることはなかった。NASAシャトル計画室長オルドリッチと発射ディレクターのジーン・トーマスは「リスクは許容範囲内」と判断。打ち上げが決行されることとなった。
同
11 時38 分
シャトルの離昇とともに、右推進ロケットのO-リングから高温ガスが噴出。73秒後、燃料タンクに着火し爆発。機体は解体されながら落下。乗組員7名が命を落とした。
事故調査報告書によると、事故の要因の一側面として、組織的な問題点をあげている。本プロジェクトの幹部たちに、政治的・予算的プレッシャー、度重なる遅延による焦り、技術者を軽視する風潮、があったと言われている。
____________________
このように、トップダウンの意思決定では、上層の事情によって、現場の声が届かず重大な過ちを起こしてことがあります。
これが以前述べたトップダウン、ボトムアップどちらが優れているわけではないという心なのです。