NEW!「冷蔵庫マザー」ってなに?ASDは〈母親のせい〉という根強いウソ!

メモ

みなさんは「冷蔵庫マザー」という言葉をご存知ですか?ASDの文献を読んでるとよく出てくるのですが、一見意味不明なのでここでまとめておきます。

「冷蔵庫マザー」は、母親の情緒的な冷たさが自閉症の原因だとする戦後中期の心理力動的仮説。のちに科学的に否定された。

概要

1940年代の「早期幼児自閉症」を初めて医学的に記述したカナーや、その後の心理学者ベッテルハイムの著書が母親責任論を大衆化

現在は自閉スペクトラム症(ASD)は神経発達に関わる多因子的な状態と理解され、この母親原因説は誤りとされる。ただし、近年は「母体環境=リスク」というより精密な“責任の再配置”が生じうる点も議論される。

歴史

起源(1940年代)

1943年、レオ・カナーが「早期幼児自閉症」を初めて臨床的に記述。論文では親の背景・態度を長く記載し、“情緒的に冷たい親”の像が読み取れた。1949年の論考では「感情的に冷えた家庭」という表現まで用いられ、ここから“冷蔵庫マザー”というラベルが広がった。

普及(1950〜60年代)

当時主流だった精神分析/心理力動の影響下で、育児環境(特に母親)の責任を強調する言説が広まる。

反証と転換

1960年代半ば〜1990年代までに遺伝学・神経生物学のエビデンスが蓄積し、母親原因説は否定されたとする総説・総括が相次ぐ。

社会的影響

この説は、母親に強い罪悪感と烙印を与え、子どもを親から強制的に分離するなど有害な介入を正当化した歴史がある。

「母親を責める言説」はその後もより巧妙な形で残りつづけ、家の管理は母親の責任という考えや“何かをしなければ悪い母親”という暗黙の圧力を生みかねない、と批判されている。

現在の論点

2000年代以降、環境要因と遺伝の相互作用研究が進み、「母体そのものが子供にとっての環境」という見方が台頭。

これにより、女性の生活習慣や体の状態が細かく監視されたり、自己責任を感じさせやすくなるという新たな危険がある。

ここでいう重圧のかかり方は、旧来の“母親が原因”という単純な非難とは異なるが、結果として母親に負荷が集中する危険は依然としてあります。

まとめ

「冷蔵庫マザー」説は歴史的産物であり誤り。ASDの理解は神経発達学的で多因子的(遺伝+さまざまな環境要因)という方向に確立している。

同時に、“母親に原因や責任を集約する”見方は形を変えて現れやすい。

参考資料

・Waltz, M. M. (2015). Mothers and autism: The evolution of a discourse of blame. AMA Journal of Ethics, 17(4), 353–358. https://doi.org/10.1001/journalofethics.2015.17.4.mhst1-1504

・Lappé, M. (2016). The maternal body as environment in autism science. Social Studies of Science, 46(5), 675–700. https://doi.org/10.1177/0306312716659372

・Cohmer, S. (2014, August 19). Early infantile autism and the refrigerator mother theory (1943–1970). Embryo Project Encyclopedia. Arizona State University. https://embryo.asu.edu/pages/early-infantile-autism-and-refrigerator-mother-theory-1943-1970

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