ビジュアル・クラウディング(visual crowding)は、目で追っている文字が単独なら読める・分かるのに、周囲に要素が近くにあるせいで、ごちゃ混ぜに知覚され、認識できなくなる現象です。
視野のかなり広い範囲で起こり、物の認識・読書・視覚探索などに根本的な制約をかけるものです。
何が起きているの?
- 近接した要素の特徴が不適切に統合され、ターゲットの形や向きの見え方そのものが歪む・入れ替わる。たとえば、小さなノイズの点が、周りのしま模様の向きに引っぱられて、本当にその向きに見えてしまう。といった具合です。
- そのためクラウディングは「見える/見えない」の二択ではなく、誤って見える問題でもあります。
起きやすい条件
- 周辺視でとくに強い
中心視では起きにくいけれど、周辺視では起きやすい。日常では視野の端にいつも物がたくさんあるので、周辺視での見分けがこれに強くしばられます。 - 必要なすき間は一定じゃない。中心から遠いほど、広くあける必要がある。
「何センチ離すか」という絶対的な距離の問題ではなく、視野のどの位置かで決まる、ということ。中心に近ければ少しの間隔で足りるけれど、外側に行くほど大きな間隔が必要になる。 - 配置・群化で「ほどける」こともある
近い=常に悪化、ではなく、並び方や群化(ひとまとまりに見えること)しやすい配置次第で弱まったり解けたりします。図形の見た目とクラウディングは深く結びついている、という見方が有力です。
どうして重要?
- 認識の限界は大きさではなく「間隔(密集度)」で決まることが多い。だから文字を大きくしても行間が詰まっていれば読みにくい、ということが起こります。
- 実務的には、UI・案内表示・書籍のレイアウトなどで「周辺視で拾わせたい情報ほど十分な間隔をあける」のが重要になります。