Unitary model(単一モデル): ある能力や特性は「大きな一つの力」としてまとまっている、とみなす見方。
Developmental (Differentiation) model(発達・分化モデル): もともと大きなひとかたまりに見える力が、成長や学習で「下位の要素」に分かれて専門化していく、とみなす見方。
どういうこと?
これだけだとわかりづらいと思うので、先日説明したEF(実行機能)で説明してみます。
- 単一モデル:幼児期などでは、EF(実行機能:抑制・ワーキングメモリ・柔軟性など)がほぼ1つの共通因子としてまとまって見える、という立場。
- 発達・分化モデル:発達が進むにつれて、共通EF + 下位要素(更新・切替・抑制…)がより分かれて観測されるようになる、という立場(=幼児では「まとまり」、学童〜成人で「統一性と多様性」)。
さらにわかりやすくたとえると
- 単一モデル → 頭の中に大きな司令塔が1つあって、それがブレーキもメモも切り替えもまとめて面倒を見るイメージ。 特に小さい子は、この「1つの司令塔の強さ」ができる・できないを左右しやすい。
- 発達・分化モデル
→ 司令塔はあるけど、成長するにつれて部署が分かれて専門化していくイメージ。
小さい頃はまとまって見えるけど、学童〜大人になると
- ブレーキ(衝動を止める)
- メモ(一時的に覚えて考える)
- 切り替え(状況に合わせて方針変更) が別々に働く感じが強くなる。
何が起きて見える?
- 未就学~幼児:1因子(=unitary)でよく当てはまるという報告が多い。
- 学童~成人:「統一性と多様性(unity & diversity)」=共通EF+下位要素という多因子構造が見えてくる。
なぜ幼児だと「単一」に見えがち?
幼児課題は測定誤差が大きい・タスクの要求が重なりやすいため、全部がひとまとめの力に見えやすい。発達とともに神経・認知システムが機能分化し、課題も洗練されて因子(ブレーキ・メモ・切り替えなど)の分離が検出されやすくなる。