前回に引き続き、「自閉スペクトラム症の感覚世界」の当事者を読んだ当事者的な感想を述べていと思います。今回は著者の時間感覚に関する仮説に焦点を絞って行きたいと思います
まず、全体像を話すと。そもそも我々が外界だと思っているものは、実際には脳が作り出したシミュレーションであり。このシミュレーションの過程では個人差が生じます。
自閉症者はこの過程で、時間の認識の単位が小さいため、刺激を間欠的に強く感じてしまい、感覚過敏につながるかもしれないと言うことです。
これだけだとわかりづらいと思うのでもう少し詳しく説明します。
時間処理と感覚過敏は関係している説
人間が外界からの刺激を受けたとき、「どの程度の長さや頻度で刺激にさらされていたか(時間的加重)」と「どの程度の面積で刺激にされされていたか(空間的加重)」でその感じ方が決まる。
例えば、一回だけ肩や背中をチョンと触られただけでは気が付かないかもしれないが、何度も連続してつつかれたり、同じポイントばかり集中的に触られたら気が付きやすいということですね。
少しお堅くいうと、一定の時間的・空間的な範囲内の刺激の入力が、一定の基準(閾値)を超えた時にのみシナプスで神経伝達物質が流れ込む(脱分極)。つまり刺激の強さや長さ、範囲が狭いさがある基準を超えないと感覚として認識されない。
自閉症者は弱い刺激にも敏感と思われているが、もしかしたら時間の処理の仕方が異なっているためにそのように感じている可能性がある。
例えばだが、一般的な人が1秒としてまとめて認識する間に、自閉症の人はもっと短い0.1秒単位で認識しているかもしれない。そうすると、同じ頻度の刺激でも自閉症の人の方が断続的に強く感じてしまう可能性がある。
つまり、時間の認識の単位が小さいほど刺激を間欠的に強く感じてしまい、感覚過敏につながる可能性があると言うことですね。自閉症の人は時間の認識の単位が小さいため、このように感じやすいのかもしれない。
また、自閉症者は、脳の神経活動の抑制や調節に関わる化学物質であるGABAの濃度が低いために、神経活動の抑制機能が低下していることが知られている。GABAによる抑制機能の低下は、時として高い知覚機能につながる一方で、外界の刺激を過剰に受け取ることにもなり、感覚過敏を引き起こす可能性がある。
他にも、ストレスや体調によって感覚過敏などの症状が左右されると考えらられており。ストレス状況下では、不安により扁桃体の活動が活発になり、興奮状態が高まることで、感覚過敏がさらに強まる可能性がある。その裏では時間分解能が向上しているのかもしれない。
要するに、ASDの人は神経伝達物質GABAの低下や時空間的な刺激の認識の違いにより、感覚過敏が生じやすい可能性があるということです。
ちなみに、科学的にはGABAが入ってるものを食しても直接脳に影響することは基本的ないと考えられているので注意。
感想
かなり統合的に自閉症の特徴をまとめてくれています。遺伝因子の複雑さからみてここまで症状の多様性の要因を集約できるのかはよくわかりませんが、発想としては面白いですし、脱分局のメカニズムを前提に考えればあり得そうな話ですね。
当事者感覚としては、本書で述べられている通り、時間の感覚(特に瞬間的な短い時間感覚)単位が小さいと感じることはしばしばあります
極めて感覚的なことですし、本書のように実験的に他人と比較していないので、確証があることではありませんが…
思考の巡りが早く刺激受容間隔も短いため、人が1発ダメージを食らう間に5発ぐらいダメージをもらっている感覚はあります
GABAがどうなっているかなどの脳内の状況までは感覚的には分かりませんが、苦痛を伴うときなど、脳内の興奮、時間の感覚が明らかに他人と比べてミリ時間が加速して体験されている感覚があります
確証はないですが感覚的にも頷ける話だと思います