本の表紙って重要ですよね。
表紙が良ければジャケ買いすることもありますし、インパクトがあれば、書店でも目立ちます。逆に表紙と内容が違うことが不満になったりもします。
先日の小説の書籍カバーに含まれる テキスト(タイトルなどの言語情報) と イメージ(視覚情報) が、①認識(想起・記憶)と ②美的評価 にどのような違いをもたらすかを調べた、ヴェローナ大学で実施された実験(ウィーン大学/RWTHアーヘン大学との共同研究)があったのでみてみましょう。
どんな実験?
本研究はイタリアの小説で、50名を対象に行われた実験でして。
まず 80 冊分のカバー情報を提示(タイトル+表紙画像)。その後、テキスト条件 または イメージ条件 のどちらかを手掛かりとして提示し、「記憶認識の課題」と「美しさ・内容推測のしやすさ・価格感・批評家の評価・既知度の評価」を行ったんですね。
結果
その結果、イメージ情報の方がテキスト情報より記憶を強化することが確認されました(いわゆる 「画像優位効果」 というらしいです)。
一方、「美しい」と評価された画像ほど記憶されやすい、という仮説は今回の実験では支持されなかったようです。
また、カバーが「馴染み深かったり」「内容を推測しやすい」方があとで再びみたときに思い出しやすくなります、特に後者については、ある程度以上に内容が予想できて初めて効果が現れる、という傾向がみられました。
1 年間の読書量・読書スピードといった読書習慣(読む頻度など)は、記憶性能に有意な影響を与えず、「読書家」が必ずしも表紙を「既に見たもの」か「初めて見るもの」かを当てる力があるわけではないことが確認されました
むしろ、読書量が多い人ほど、「これは見たことがある」と答えやすくなる傾向 が見られました(少し意外ですが、どうやら慎重さがやや下がり、当てずっぽうの “はい” が増えるためと考えられる。とのこと)。
まとめ
本の表紙というデザイン要素において、イメージ情報とテキスト情報は認知や美的判断において異なる処理がなされることが明らかになりました。
美的に美しい=記憶に残る、とは限らず、注意喚起や親しみ、内容の測性のしやすさといった要素が記憶に影響を与える可能性があります。
読書習慣の有無に関係なく、イメージ情報の記憶を促進させる普遍的な効果があるようです。
本の表紙にある画像や文字は、見た目の美しさだけでなく、本の内容や質を伝える役割もあります。
ジャケ買いで素敵な本に出会えることもあるので、一概に言えませんが、「表紙で本を判断するな(Don’t judge a book by its cover)」という格言も頭の片隅に入れておきたいですね。
出典
Chana, K., Mikuni, J., Rebora, S., Vezzani, G., Meyer, A., Salgaro, M., & Leder, H. (2025). Judging Books by Their Covers: The Impact of Text and Image Features on the Aesthetic Evaluation and Memorability of Italian Novels. Literature, 5(2), 13. https://doi.org/10.3390/literature5020013