「楽しみのための読書」が20年でじわじわ減っている話

ノート

2003~2023年の全米時間使用調査(ATUS)を見ると、「楽しみのための読書」(仕事や学校以外の目的で行われるあらゆる読書)を“その日”にした人の割合は、2004年の28% → 2023年は16%まで下がりました。
一方で、子どもと一緒に読む時間は低いまま横ばいです。

どのような研究

  • 対象は236,270人
  • 調査は前日4時〜当日4時の24時間に何をしていたかを詳しく聞き取る方式。
  • 着目点:
    1. 楽しみのための読書(本・雑誌・新聞・電子・オーディオ含む)
    2. 子どもとの読書(読み聞かせ、音読の手伝いなど)

分かったこと

  • 毎日読む人は減少中:統計的には毎年3%ずつ減のペース。
  • 読む人は長く読む傾向:2023年の全体平均は16分だけど、実際に読んだ人に限ると平均1時間37分。読む人はしっかり読んでいる。
  • 子どもと読む人は少ない:平均日でわずか2%、時間は平均28分。20年で大きな変化なし。
  • どこで読む?:ほとんど自宅。自宅外で読む人は2003年9% → 2023年6%へ減。
  • 一人で読む派が多数:他の人と一緒に読書する割合は微減。

広がる「読書格差」

読書の“参加率”にははっきりした差があり、しかも時間とともに開いています。

  • 人種:黒人 < 白人(差は拡大)
  • 学歴:高学歴ほど読む(差は拡大。2023年は大学院卒が高校以下の約2.8倍)
  • 所得:高所得ほど読む(2023年は最高所得層が最低所得層の約1.5倍)
  • 都市性:都市 > 非都市の差がじわじわ出てきた
  • 性別:女性 > 男性(差はおおむね安定)
  • 年齢:高齢者の参加率が下がり、年齢差は縮小方向

なぜ問題か

読書は学力や仕事の成果だけでなく、ストレス・不安・抑うつの軽減、睡眠の質向上、認知機能の維持など、健康面にも効くことが分かっています。
それでも“読む人が減っている”うえに、読書から遠ざかりがちな層がより遠ざかっている。これは教育・健康・地域格差の固定化につながりかねません。

コロナの影響は?

2021年前後に障害のある人の読書が一時的に増えた気配はあるものの、全体としてドンと増えた事実は見られず。
“おうち時間=読書爆増”ではなかったようです。

研究の限界

  • 平均日のデータなので、「年に数冊読む人」は拾い切れない面があります。
  • 読書の種類(紙/電子/音声、フィクション/ノンフィクション)は区別していません。
  • 初期のデジタル読書の一部が過少計上の可能性はありますが、結論全体は揺らがないと考えられます。

まとめ

  • 毎日の読書をする人は、この20年で確実に減っている
  • 読む人はしっかり長く読むが、母数が小さくなっている
  • 子どもとの読書は低いまま横ばい
  • 読書格差は拡大——だからこそ、届いていない人に届く設計が鍵

「1日5分」を今日から。積み上がれば、数字もきっと変わります。

(アメリカの調査ですが)読書量が減ってるのは想像がつきますが、読書会主催者としては少し寂しいですね
とはいえ、自分も読書会がないと読むタイプではないので(楽しみのための読書なのか?)気持ちはわかります
これからも主催者・参加者として本を読んでいこうと思いもいました(小並感)

Bone, J. K., Bu, F., Sonke, J. K., & Fancourt, D. (2025). The decline in reading for pleasure over 20 years of the American Time Use Survey. iScience, 28(9), 113288. https://doi.org/10.1016/j.isci.2025.113288

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