ヒューリスティックという言葉を聞いたことがあるでしょうか。よく「経験則」や「認知の近道(mental shortcut)」なんて言われたりします。
もう少し詳しくいうと、厳密な分析や熟慮することなく、「自分が持っている知識や経験、その時の感情、その場にある情報」などのありものと「簡略的なルール」で素早く判断するアプローチを指します。
例えば、スーパーのレジに並ぶ時、ぱっと見の並んでいる人数が少ない列に並ぶこと。これは日常的にヒューリスティックを用いている典型的な例といえます。
厳密な分析を端折って「並んでる人数が少ない→並ぶ」という簡略的な図式に従っています。
このように、ヒューリスティックは分析を端折るので、素早く意思決定が必要な場面では非常に有効です。
しかし、一方で、その性質上バイアスにも陥りやすく、常に正しいとは限らないんですよね。
先の例なら、本当に最も早いレジを選ぶことを目的とするなら、レジを打っている人の手際、並んでいる人の商品の量、決済方法の予測、などなど…を考慮しなければならないでしょう。(詳しくはまた解説します)
さて、このように常にヒューリスティックに判断すればいいわけでもなく、かといって、ヒューリスティックは当てにならないからダメだ、ということでもありません。
状況に応じて、熟慮が必要なのか、素早くヒューリスティックに進むべきなのか、「使い分け」や「程度」が重要だということです。
レジに並ぶぐらいのことであれば、列の人数と店員の手捌き、並んでる人の商品量、ぐらい考慮するのが妥当かな、それ以上のことは考えすぎだな、とか。
しかしこれが、自動車選びや家選びならヒューリスティックに判断とも言えないでしょう。費用、広さ、間取り、駅からの距離、…、いくら分析・熟考してもし足りないぐらいでしょう。
また、ヒューリスティックは前回話した「スキーマ」とも大いに関係していおりまして、スキーマによる「経験から得た情報のパッケージング」があるからこそ、先ほどの例のような「分析や思考のオミット」ができるんですね。
さて、次回はヒューリスティックとよく対比される「アルゴリズム」との関係について説明します。