前回はヒューリスティックについて、簡単に説明しました。
今回は、よくヒューリスティックと比較に挙げられる、「アルゴリズム」について、どのように違うのか、またどう使い分けるのか説明します。
ヒューリスティックとアルゴリズムはよく対比されるんですが、これは似て非なる別物。
ヒューリスティックは、前回申し上げた通り、問題の解決のための経験則によるショートカットです。
一方、アルゴリズムは、「特定の課題で結果を出すための一連の手順」のことです。
前回、レジに並ぶとき「人数が少ないから早く順番が回ってくるはず」と判断する、ヒューリスティックの例を出しました。他の諸要素の考慮検討を省略し「人数が少ない→早い」という簡略化が働いています。
このような、分析の省略は状況が違えど、さまざまな場面で使われます。
一方、例えば、料理のレシピを手順通りに作るときにはアルゴリズムが使われます。
仮に「カレーを作る」という場合であれば、「野菜を炒める → 肉を加える → 水を入れて煮る → ルウを入れる → さらに煮込む」といった具体的なステップがあります。
行程は明確に手順化されており、アルゴリズムに従えば、誰にでも同じような結果が得られます。
しかし、このアルゴリズムは「カレーを作る」こと以外には使えない手順ですよね。
このように、アルゴリズムが「特定の状況に特化した手順」を指すことに対して、ヒューリスティックは「様々な状況に適用可能な認知の簡略化」を指す、という違いがあります。
どちらも「意識的な思考」を必要としないという点で共通していますが、アルゴリズムの場合は省略ではなく「決まった手順化」することで「一定の結果を得る」こと主眼を置いています。
片やヒューリスティックは、分析を省くことで「素早く判断する」ことが主たる的になっています。
こう考えると
・一定の手順で一定の結果を得たい(同じ作業を繰り返す。均一の成果が欲しい)→アルゴリズム
・ほどほどの精度でも素早く判断したい→ヒューリスティック
・時間をかけてでも確度の高い重要な判断をしたい→分析・熟慮
という使い分けが一つ見えてきますね。
さて、次回はヒューリスティックとバイアスの関係について解説します。