前回、行動の背後にある、目に見えない人の心の中を想定する、「心の理論」についてみていきました。
今回は、心の理論を測る上でもっとも有名な、誤信念課題(false-belief task)を紹介します。
誤信念課題を一言でいうと、「他人が現実とは違う信念(誤った思い込み=誤信念)をもっているときに、その人がその誤信念にもとづいて行動するかを予測できるか」を調べる課題です。
最も典型的な例は、サリー・アン課題(Sally-Anne Task・古典的誤信念課題/マキシ課題/場所移動課題)という方法です。
この課題では、子どもに対してつぎのような場面をみせます。
まず、サリーという娘がある物を一つの場所に隠し、その場を離れます。
そしてサリーがいない間に、アンという娘が、その物を別の場所へ改めて隠します。
その後、サリーが戻ってきたときに「サリーはどこを探すと思う?」と子どもに尋ねます。
この課題のポイントは、もし子どもが「サリーは最初に隠した場所を探す」と予測できるなら、子どもは「サリーは不在中に起きたことを知らない=現実とは違う信念(誤信念)をもっている」と理解していることになります。さらに、サリーがその誤信念に基づいて行動すると推論できる、つまり「心は現実とは誤った表現をすることがある」と理解していると言えます。
この課題や類似の課題は幾度となく追試されてきました。その結果、3歳児は一貫して失敗しやすく(物が「今」ある場所、そして子ども自身が知っている場所をサリーも探すと答えがち)、一方で4歳半〜5歳頃になると、サリーの誤信念を正しく推論できるようになることが示されています。
しかしこの課題には懸念は指摘されています。次回はそんな「知識の呪い」について見ていきましょう。

