医者の家系でインテリ。かつての黒人のテンプレートからかけ離れている主人公。
大学教師の傍ら執筆活動をしているが、「高尚な」小説はなかなか売れず。やぶれかぶれで書いた黒人ゲットー小説が大注目を浴びてしまう。
世間にウケるものと(黒人感)、自分の芸術的感性や人種的アイデンティティに乖離がある。抽象的な葛藤としては普遍的に物語で描かれてきだが、本作は「黒人ってこんな人だよね」という世間と当事者の感覚の乖離がテーマとなっている。
作中作構造や挿話の多用も挑戦的。
前述したように、人種的テンプレートから(世代をかけて)離れていった者が、やむなく回帰したことが評価される。シニカル。アメリカの黒人差別の現在地点?
「黒人」というものへの乖離した態度とメタ的な作品構造がマッチしている。
「ああ、それだ。助け船を出してくれてありがたい。あなたの小説に出てくるような人たちは、町で見かけたことがある。リアルな人たち、地に足のついた、素朴な人たち。大学を出たって、ああいう人たちについて書けるようにはなりませんよ」
パーシヴァル・エヴェレット『消失』雨海弘美訳,集英社,2026年.
主人公は受け入れきれていないが、あえてやっている策士もいるだろう。
また、「新しい困難」(同性愛、妊娠中絶、認知症)が現前していることを家族を通して示されている。メインテーマと周辺事項の扱いの距離感がうまいと思いました。


