二種類のニヒリズム

ニーチェは現代を神の死んだ時代と見なすが、神の死とは、至高の価値が無価値 事態をニーチェは「ニヒリズム」と呼ぶ。ところで生が下降と上昇の二つに分けられたように、ニヒリズムも「受動的ニヒリズム」と「能動的ニヒリズム」の二つに区別される。 受動的ニヒリズムとは、従来の至高の価値を信ずる精神の力を失ったゆえに、そうした価値が無も同然になるという事態である。それは彼岸的なものを信ずる古い 道徳、古い信仰にしがみつく生と同様、下降する生の在り方である。これに対して能動的ニヒリズムとは、精神の力が高揚し、従来の価値を乗り超えていくがゆえに、従来の価値が無も同然になることである。上昇する生とは、 そのように従来の価値を超えて、新しい解釈のもとで新しい価値を能動的に創造していく生である。そのような形で上昇する生を生きる-人間をニーチェは「超人」 (Ubermensch) と表現する。 それに対して、下降する生を生きる人間、価値の転換を知らず衰退していく人間は「おしまいの人間(未人)」と言われる。


越部良一. (2005). 生の哲学. 小坂国継, & 岡部英男(編).  倫理学概説. ミネルヴァ書房, pp. 209-210
Takaichi

多摩地区で年50回以上読書会を主催中
ASD・ADHD当事者
慶應義塾大学経済学部卒
     
「神経発達のスペクトラムについて」「文学、アニメ、映画、アートに描かれてること」「特性を踏まえた社会との距離感」が関心領域です

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