支配に甘える家畜が独裁者を生み出す!「動物農場」

 

オーウェルの名作「動物農場」読みました

 

動物たちが、人間の牧場主になり変わって牧場経営をしていくが…というお話

 

ロシア革命時代の話を戯画化したものですが、権力を握った者のエスカレートぶりが印象的です

 

ハヤカワepi新装版を読みましたが、ソ連の歴史には疎かった自分には後半に付されている序文(?)が非常に勉強になりました

 

 

なぜオーウェルは「動物農場」を書いたのか

当時スペインにいたオーウェルはスペイン政府が共産主義に呑まれて、またソ連と共に共産主義者たちが罪なき人を異端者として粛清する様を見聞きしていた。

 

さらに、イギリスに帰ってみると平和ボケしたイギリス人達は、全体主義のプロパガンダを鵜呑みにしソ連のやり方を容認している。

 

このようにソ連の内情に無頓着であろうとする西欧人に対して、オーウェルはソ連神話を破壊するモチベーションで本作を打ち出したという背景がある

 

 

ロシアの歴史

また、訳者あとがきからはロシア革命の背景も簡潔に知ることができます

 

20世紀初頭とロシア帝国は階級社会で、後進農業国であった。

 

英仏独といった産業革命に伴う経済発展を遂げていた国々に追いつかんと、レーニンが革命を実現しソ連が誕生する。

 

レーニンには、トロツキー(劇中ではスノーボール)とスターリン(ナポレオン)という二人の腹心の部下がいたが、レーニン亡き後スターリンはトロツキーを追放。さらに、スターリンは危険分子は粛清、トロツキーの政策を自分のものにし、歴史を改変し、強制収容所の奴隷労働でインフラ建設、自信を神格化し、肥え太っていった。まさに動物農場で描かれている通りの展開である。

 

 

単なる独裁者批判ではない

あとがきによると、オーウェルは独裁を助長してるのは、上に立つものだけでなく、支配に甘んじて不正を糾弾せず、批判の声を上げないものたちだ。としている。

 

加えて、本書を出版するに際してオーウェルが痛感したことは、イギリスの出版社を代表とするメディアの軟弱な態度だ。オーウェルの主張では、(政府の)”公式な検閲はそれほど面倒なものではなかった”とされている。

それ以上に、出版社や編集者が、世論の空気を読み、ソ連に忖度する形で、自主的に検閲してることに憤っている。

 

このように、オーウェルは単に独裁者を引き下ろすことをよしとせず、権力を構造的に捉え、その問題を嘆いていたことが作中作外から感じられる。

 

 

感想

自分も小さな組織だが、オーウェルが言うような「高圧的な独裁者とそれに甘んじる取り巻き図式」に悩まされていたことがあったので、本書を読みながら非常に歯痒くもどかしい気持ちが思い出されました

 

空気を読んで忖度すると言うのは日本人の国民性のようだが、当然あるところにはあるものですね

 

「1984年」よりも短く、動物を使ったおとぎ話としてわかりやすいので、先に読むことをおすすめします

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