それは特に文学において偉大な仕事を達成する人間を形成している特質、シェイクスピアがあれほど厖大に所有していた特質、それが何であるかということだーーぼくは「消極的能力/ネガティヴ・ケイパビリティ」のことを言ってるのだが、つまり人が不確実さと不可解さとか疑惑の中にあっても、事実や理由を求めていらいらすることが少しもなくていられる状態のことだーー(中略)この問題は幾巻もの本を書いて追究してみても、たぶん、次のことに尽きるだろう。つまり偉大な詩人にあっては美の感覚が他の全ての考えを征服する、あるいはむしろ抹消するということだ。
一八一七年 ジョージ及びトマス・キーツ宛〈ぼくは「消極的能力」のことを言ってるのだ〉
詩人の手紙,ジョン・キーツ [著] ; 田村英之助訳,(冨山房百科文庫, 5),冨山房, 1977.4