① DMN(Default Mode Network)とは?
「デフォルトモード・ネットワーク」のこと
簡単にいうと、DMNとは「ぼんやりしているとき」や「何もせず安静にしているとき」に働く脳のネットワークのことです。
- ぼーっとしている時、心がさまよっている時、自分自身や他人について考えるときに活動が高まる。
- 過去の記憶を思い出したり、未来の計画を立てたりする際にも関係。
- 自己認識や内省的な思考にも関係するネットワーク。
② TPN(Task Positive Network)とは?
「タスクポジティブ・ネットワーク」のこと
外界への注意配分・課題遂行・作業記憶などで活動する複数の タスク関連ネットワーク(例:背側注意ネットワーク〔DAN〕,前頭頭頂/中央実行ネットワーク〔FPN/CEN〕 などをまとめた便宜的名称。
簡単に言うと、TPNとは「集中して何か作業をしているとき」に活発になる脳のネットワークのことです。
- 具体的な課題や問題を解こうとするとき、注意力が高まっているときに活動が高まる。
- 外界の刺激に注意を向けたり、問題を解決したりする時に機能するネットワーク。
③ DMNとTPNの関係性
DMNとTPNは概ね相反する関係にあります。
- DMNが活発になるときはTPNの活動が抑えられる。
- TPNが活発になるときはDMNの活動が抑えられる。
例えるなら、
- DMN:自分の内面世界に入り込んで、思考があちこち漂っている状態(ぼーっと内向きな思考)。
- TPN:注意を外の世界に向けて、目の前の問題や作業に集中している状態(集中した外向きな思考)。
※ただし課題や心的状態に応じて協調も起こることもある。
④ DMN・TPNの重要性
因果関係は完全に確定しているわけではないが、この2つのネットワークのバランスが重要で、バランスが崩れると以下のような影響が出るという一定の研究的裏付けがある。
- DMNの過活動:
抑うつ症状や不安症状が起きやすい(ネガティブな思考にとらわれる)。 - TPNの過活動やDMNの低下:
疲労感が強まったり、ストレスが高まりやすい(常に緊張状態)。
逆に、両者が適切に切り替わることで、創造性や効率的な作業が可能になります。
⑤ 身近な例での理解
- DMN優位の例:
休日にリラックスしてカフェでぼーっとしている時に、ふと新しいアイデアが浮かぶ。 - TPN優位の例:
試験中や仕事で集中して問題を解いている時、周囲のことが気にならず、作業に没頭している状態。
まとめ
外の世界に集中する系(複数のタスクポジティブ・ネットワーク)と、内なる世界を旅する系(DMN)が状況に応じて切り替わり、時に協力する――その柔軟性こそが健全な認知・感情機能と創造性の鍵になる。